伊丹十三について

1997年12月23日。

1997年12月23日

訃報

 当日の朝刊に掲載された伊丹十三の訃報を読んでそのニュースを知ったのですが、本当にびっくりしました。その日は学校をサボってワイドショー三昧としゃれこみたかったけど、最後の授業日なのでさすがにあきらめてビデオをセットして家を出る(笑)。自殺説が浮き沈みしていたようでしたが、そんなことは今となってはどうでもいいことです。むしろ重要なのは日本映画の一ジャンルがひとつ消えてしまったということでしょう。

 一連の作品を見て思うこと。多少マンネリの感もありましたが、伊丹監督の作る作品群は誰が観てもそこそこに面白く、社会派映画にありがちな難解さも全くない物を作り出せる稀少の人でした。その伊丹十三もついに亡くなられてしまいました。当然伊丹の映画はもう観れませんし、個人的に大好きな本多俊之の絶妙なサックス節も映画の中では聴けなくなります。渥美清も死んでしまって、邦画のシリーズ物で楽しみなのは釣りバカくらいになってしまいましたが、それさえも既に下降線のように思えます。もう日本には北野映画とアニメしかないのかもしれません。

 先ほど述べたように、伊丹作品の魅力は社会的なテーマを扱いながらストーリーとしても十分おもしろく、そのテーマについて知識をあまり持ち合わせていなくても楽しめる点です。それは説教臭くない映画ともいえますね。マルサの女を筆頭とするヤクザがテーマとも言える「女」シリーズ、ヨーロッパ映画路線を狙った(と思われる)身障者の実生活を描いた「静かな生活」、安楽死のあり方を問うた「病院へ行こう」。すべての作品において安定したエンターテイメントとしての映画を確立しているのはやはり驚異的事実なのです。

 私が一番最初に触れた伊丹作品はあの「マルサの女」であり、当時小学生でしたがその作品の持つ独特の魅力に強い衝撃を覚えたのは今でも覚えています。個性的な…というかアクの強いといった方が適切とも言えるキャストの面々。いつも同じキャストの顔ぶれということからまるで一つの劇団の演劇を見ているような不思議な感覚。コントラストの強いライティング、容赦ないおヤクザさん(笑)。声もバッチリな濡れ場のシーン(笑2)。そして本多俊之氏の奏でるこれまたエキサイティングであったり哀愁的であったり、目まぐるしくそして適切に場面を語る音楽。いったいこれらの魅力を凌駕しうる作品が今の邦画にいくつあるでしょうか。

 私は声を大にして言いたいです。伊丹十三はあの黒沢監督にも並びうる(クロサワのような肩書きはないですケド)日本の映画界をしょってたった名監督ですぜ!!

伊丹作品紹介
お葬式 (1984)
 お葬式という一つの行事を何のどんでん返しもなくただひたすら淡々と見せるという、「お葬式マニュアル」のような映画。しかしその中にも儀式という固定化されたものの滑稽さの強調するお笑いがあり、ちゃんとし伊丹路線も踏んであるのですよ。
タンポポ(1985)
 宮本信子扮する、亡くなった主人が残したラーメン屋を必死に切り盛りする主人公タンポポ。しかし彼女の作るラーメンは死んだ主人のように美味くはありませんでした。ひょんなことからトラック運転手ゴロー(山崎努)たちの助力で、美味いラーメンを作るための研究が始まったのです…。
マルサの女(1987)
 税務署に勤める板倉亮子(宮本信子)が脱税の疑いを持ったラブホテル経営者権藤秀樹(山崎努)。しかし脱税を暴くにはそう一筋縄ではいかない。そして板倉は国税局査察部に転属され、権藤とサシで戦うチャンスが訪れるのですが…
マルサの女2(1988)
 今度の敵は宗教法人を盾に脱税だけにとどまらず、ヤクザを従えたあくどい金儲けをしている鬼沢鉄平(三國連太郎)。今回の作品は前作よりも音楽や演出もパワーアップ、三國連太郎の演技力もあってか、伊丹作品のなかでもっともアブラの乗った作品といえると思います。さらにオ○ムのようなカルト宗教が社会問題化しはじめたころということもあって、興味深い内容でした。
スウィートホーム(1989)
 宮本信子の出てくるホラー映画…。怖がりだからホラー映画はまともに見れないの(笑)
あげまん(1990)
 男に幸運をもたらす「あげまん」であるナヨコ(宮本信子)と主水(津川雅彦)の恋愛物語です。
ミンボーの女(1992)
 ヤクザにショバ代をゆすられ続ける「ホテル・ヨーロッパ」。鈴木(大地康雄)と若杉(村田雄浩)のたった2人で”ヤクザ対策班”が結成されるがさっぱりうまく行かず、民事介入暴力「ミンボー」専門の弁護士である弁護士井上まひる(宮本信子)に助っ人を頼むのですが…。
大病人(1993)
 映画監督向井武平(三國連太郎)は治癒不可能なガンの宣告を受けるのですが、なかなかそれを受けいられない、でも死ぬということは当然怖い…。冷たい病院側の態度の中で死に方の選択を考えなければならない。結局は美しく死ぬことが出来るのですが、その過程が面白いのです。
静かな生活(1995)
 マーちゃんの弟のイーヨーは脳障害を持っているので、面倒を見てあげなければならないのですが、両親共に外国に住んでいるので、マーちゃんがイーヨーの面倒を見てあげなければなりませんが…
スーパーの女(1996)
 小林五郎(津川雅彦)が専務を勤めるスーパー「元気屋」は新しく開業したライバルの「安売り大魔王」の攻勢にやや弱りぎみ。そんなところに同窓生井上花子(宮本信子)が現れ、彼女をブレーンに復活作戦が始まるのですが…
マルタイの女(1997)
 伊丹監督最後の作品ということで、いやでも見る側に気合いが入ったんですが、見た後しばらく呆けてました…伊丹作品最悪の映画でしょう。
伊丹作品俳優使いまわしリスト
 さっきも書きましたが、伊丹作品の特徴は前作でも使われた俳優を使いまわす点です。宮本信子にいたっては毎回主人公という、まるでひとつの劇団の演劇を見ているみたいですね。ここでは出演回数の多い俳優さんのリストとその配役の表を作ってみました。「-」は未出演、空欄は脇役として出演しています。

. 宮本信子 津川雅彦 里木佐甫良 加藤善博 高橋長英 上田耕一 桜井勝 大滝秀治 久保晶 米倉真樹
お葬式 雨宮千鶴子 木村先生 フクちゃん 海老原
の部下
- - - 雨宮正吉 - -
タンポポ タンポポ マネージャー 日の出ラーメンのおやじ 白服の男の子分 課長 タンポポの客たち - 老人 大三元のおやじ -
マルサの女 板倉亮子 花村 山田 取引課長 蜷川の腹心 査察官 露口 - 査察官
マルサの女2 板倉亮子 花村 家主 山田 商社員 猿田 査察官 - 信者代表 査察官
あげまん ナヨコ 鈴木主水 瀬川之丞 - カメラの男 千々岩 坊さん乙 -
ミンボーの女 井上まひる 外務省の友人 ホテルマンたち - 伊場木の子分 ホテルマンたち プールの老人 ホテルマンたち ホテルマンたち
大病人 医師 病院の患者たち レントゲン技師 瀕死の病人 麻酔医 - - - 医師たち
静かな生活 団藤さんの奥さん - - お巡りさん - - - -
スーパーの女 井上花子 小林五郎 駐車場係 - 鮮魚部チーフ - 生け簀の解体業者 - - -
マルタイの女 磯野ビワコ 真行寺編成局長 - 劇団プロデューサー - 検察庁の事務官 - - 検察庁の事務官

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February 3, 2004 Comments (0) Trackback (1)
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