シンドラー社製エレベータ事故と仕事への倫理

この事件は今自分が就いているお仕事柄(エレベーター業界ではない)、人ごとではない事件だったので結構気になっています。このまま単純な原因で事件が収束してしまうと、物事の本質がつかまれないまま世間の興味をそらしてしまうことになります。

たまには Weblog らしく

 たまには Weblog らしく、世の中の出来事について記事を書いてみます。この事件は今自分が就いているお仕事柄(エレベーター業界ではない)、人ごとではない事件だったので結構気になっています。現在報道されている内容では、シンドラー社に非があるような報道が多く見受けられますが(まぁあの企業姿勢じゃ仕方がないですね)、このまま「シンドラーの製品に不具合があった」「シンドラーの(メンテ業者への)技術協力体制に問題があった」だけで事態が収束してしまうと物事の本質がつかまれないまま、世間の興味をそらしてしまうことになります。

 日本国内では、全てのエレベーターで半年毎の定期メンテナンスが法令で定められているので、エレベーターが設置される数だけメンテナンスのお仕事が定期的に発生します。向こうから勝手に、そして定期的にお仕事が転がり込んでくるので、エレベーターのメンテナンス業務はけっこう美味しいお仕事です。なので三菱電機や東芝などの日本のエレベーター製造メーカーは、それぞれ自社内および子会社にメンテナンス部門を胞した上で技術情報を緊密にやりとりし、高値安定のメンテナンス業務で安定した利益を確保しているという、規制の厳しい日本ならではの特殊な業界となっています。法令で定められたメンテナンス業はとても美味しい仕事である分、ダークサイドの温床になりやすい非常に危険地帯でもあるのです。この事件で露わになったことは結構根が深いものだと思います。

 メンテ会社についての情報が報道ではあまり見受けられませんが、まず巨大組織から叩きにはいるのはマスコミの習性ゆえですかね。日本各地で問題を起こしているシンドラー社製エレベータのメンテに携わっていたメンテ会社についての統計とか出てきて、なおかつそれが一社だけだったら確実にメンテ作業上の問題ということで終息しそうなんですけどね。ただし今回問題になっているエレベーターのメンテナンスはシンドラーとは組織的に全く関連のない独立系メンテ業者。単にエレベーター自体が不良であったと言うことであれば問題は単純だと思いますが、メーカーとメンテ業者の技術連携が不十分であったかとかそっちのほうの問題になりそうな可能性が大ですね。

 NHK の報道で、メンテ業者がメーカーから技術資料を提供してくれないからという理由から、メンテナンス対象のエレベーターから図面起こしをしている場面がありましたが、そんないい加減な仕事で良いのでしょうか!? 仕事を請け負ったからにはそのエレベータに対するメンテを実施する十分な技術的知識を持っていて、責任を持ってやり遂げるだけの能力があるということをお客に対して保証して報酬を貰っているわけですから、いざ仕事が始まってからそのエレベーターの仕組みへの理解を始めるような綱渡り的なやり方が、ましてや人の命に関わるエレベーターのメンテナンス業務であって良いのでしょうか。私も業種は違えどメンテナンス屋としておまんまを食べさせて貰っている人間ですが、普通は仕事を始めるためにはメーカーからの図面取り寄せから始めますよ。当然タダではありませんのでライセンス料を支払ったり、海外メーカー製であれば翻訳業者を雇ってマニュアルの日本語化作業をやったりもします。でもお金を貰ってお仕事するのですから、それくらいの事前準備は当然だと思います。

 自分たちが行っている綱渡り的メンテナンスが、人の命を奪う可能性があるかもしれないということを熟知する、仕事に対する倫理というのを持ち合わせていないのでしょうか。

 そして安いからと言って、メーカーとの関連を持たないメンテ業者に安易に切り替えてしまう、ビルやマンション管理業者たちにも少しは問題があると思います。

 そんなわけで今回の事件はどれが一つの組織および個人が悪いというわけではなく、

  1. 自社利益を追求するあまり、技術供与を渋るメーカー(シンドラー)。そしてひょっとしたら設計ミスのエレベーターを売っているシンドラー。
  2. だからといって技術資料なしで綱渡りなメンテをやる独立系メンテ業者
  3. 安いからといって、安易に独立系(≒綱渡り)メンテ業者に切り替えるビルおよびマンションのオーナー

 三者それぞれに問題があると思います。そして、今後このようなことを起こさないためにどういった国は法律面でどういったサポートを行うか、ですね。


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June 15, 2006 Comments (0) Trackback (0)
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